2024/12/10

『三浦康太郎 個展 VANITAS』 at atelier utopiano






 『三浦康太郎 個展 VANITAS』 at atelier utopiano


 黄泉を象徴する柘榴からはばたく無数の蝶を目にしたときから、この展示へ訪うと決めていた。


 彼岸が“闇”とあらわされるなら、その果実のなかから飛翔している蝶は、ひとつの世界から脱皮してゆく暗示のようにも受けとれた。


 漆黒より生まれいづる変容の羽は、氷の花びらのような白。


 そのはばたきを軽やかな強さととるか、あえかな儚さととるか。




 入り口で迎えてくれた三浦さんの言葉にも、とても胸をうたれました。


 「一歩立ちどまり天を見あげ、空のキャンパスに星座を描いた先人たちのように心を豊かにし、流行や時代に流されるのではなく、いつも静かにそこにあるもの。どれだけ時間が流れても変わらないもの」


 太陽の花の黒、月の雫をあつめたような葡萄。


 個人的にはギリシアの神話を感じるものがあって、柘榴にペルセポネを、向日葵にアポロンを、月と葡萄にディオニュソスとアリアドネを想い、その重層的なひろがりに、三浦さんが綴られていた言葉が呼応することに気持ちを馳せていました。


 独立した画が水の底で溶けあって織りなしていた物語のまえで呼吸し、それを自分のなかに迎え入れることができて、嬉しかった。




 帰り道、日没のころに空にひろがっていた青が神秘的に美しくて、そこに浮かぶ上弦の半月が白い片翅みたいで、柘榴から飛びたつ蝶の羽のように感じられた。


 でも、この目で見たものの半分もつたえられない。