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わたしは自分のなかの傷を意識的に結晶化させて美しく見せるためのマジックで、近づいてよく見れば醜悪なものを、きれいな物語に化かす、という手法をもちいていたから。
いまはその当時のような言葉は綴れないだろうし、綴れたとしても、いまはそうしたいとは思わない。
わたしは言葉に真摯でありたいの。
いつかのわたしは言葉に対して不誠実だった。
そしてその不誠実さゆえに美しく見えるものも、たしかにあるのよ。言葉にかぎらず。
でもそれは贋物の美だわ。
本物も贋物もないことをわかっているうえで、あえて「贋物」といったけれども。
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