2026/02/27

常磐










 時を遡って、去年の11月。


 猪苗代湖に旅されたかたから、あるメッセージが送られてきました。


 「福島に行く新幹線があなたの翡翠色にコノハナサクヤ色のボディラインでした」


   (撮影 MAJO)


 わたしが翡翠という石、その石にまつわるもののなかに自分のなにかが通じていると感じること、深い共鳴を覚えていることは、すでに幾度か綴ったとおりですし、彼女はそれを知り、これまでを見守ってくれたひとでもありました。


 だから彼女がその色を見てわたしを想いだしてくれたこと、写真を送ってくれたことが嬉しく、そのときはそれで終わったのですが、今年の1月に大宮に足を運ぶ用向きがあり、電車から窓の外の風景を眺めていると、不意に目のなかを見覚えのある列車が走り抜けてゆき、すぐにそれが写真で見たそれとおなじものであったことに気づきました。


 わたしのまえにこうしてまたあらわれた“翡翠色”に必然性を感じ、その場で調べたところによると、それは東北新幹線「やまびこ」で、翡翠色の部分は「ときわグリーン」と名づけられていることを知りました。


 「ときわ」というのは漢字で「常磐」のことですが、その言葉から連想するものとして、心にひとつの絵が浮かんできました。


 3月に草舟あんとす号さんで開催するふたり展、『片翅の泉』にて、まさに『常磐』という題の絵を、ご一緒させていただく画家のyukaneさんが描かれています。


 わたしはその絵をはじめて目にしたとき「イワナガヒメだ」と感じたのですけれども、「コノハナサクヤ色」と写真を送ってくれた彼女があらわした色と「ときわグリーン」がならんでいたことで、そのことを想いだしたのです。


 そこであらためて「常磐」という言葉の意味を紐解いてみました。


 常磐は、“常”に変わらない“岩”のこと、「とこ(常)いわ(岩)」が略されたもので、永久不変のこと、変わらない性質を保ちつづけること、そのようなありかたを岩石のなかに見ることを指し、冬においても葉が緑のまま変わらない(一年中“不変”な)樹のことを「常緑樹」といいますが、もともとはそれも「常磐木(ときわぎ)」と呼ばれていたのだそうです。


 さらに「常磐色」と名づけられた日本の伝統色は、「松や杉のような常緑樹の葉の色」「永久不滅や不老長寿といった意味あいがこめられている」とあり、翡翠という石と松の木に共通するものが宿ることを去年から感じているので、その説明にパズルのピースがまたひとつ、嵌まってゆくような感覚でした。


 日本の神話に興味のあるかたはご存じだと思いますが、イワナガヒメとコノハナノサクヤヒメという姉妹は「岩の永遠」「花の繁栄」をそれぞれつかさどるとされ、陰と陽の対となっています。


 yukaneさんの『常磐』は、ぜひ展示をとおしてご覧いただければと思うのですが、過去にやはり草舟あんとす号でひらかれたyukaneさんの個展『繭の森 Ⅲ』のさいにお迎えし、いまはわたしのところにいてくれている『澪 ー散華ー』という絵とこの『常磐』は対になっているように、ひと目見た瞬間からわたしは勝手に思っていて、『澪 ー散華ー』のなかにわたしはずっと、コノハナノサクヤヒメ、そしてそのときどきでミズハノメノカミやセオリツヒメの息吹も感じてきたのですけれども、このお話はまたいずれ、機会がありましたら*


   ( yukane『澪ー散華ー』 )



 ちなみに「コノハナサクヤ色」と彼女があらわしてくれたやまびこのボディの色は「つつじピンク」、白い部分は「飛雲ホワイト」という名がついているのだそうです。


 桜ではなくつつじなのね、と思いつつ、つつじは「叡智」を示す花でもあるので、「太古の岩の記憶」に通じるものとして、もしかしたらイワナガヒメの花でもあるのかもしれないな、と思ったり。


 やまびこのピンクが、つつじ色でもあり、さくら色にも見えることは、なんだかわたしをやさしい気持ちにさせました。


 かの女神たちが白い雲のかたちをした竜にのって、空を飛ぶ姿を思い描きながら。