家の近くのおいしいケーキやさんが移転してしまうので、いつもは特別な日のためのモンブランをなんでもない日のおやつに。
繊細な甘さが舌のうえで溶けるほどに積もる、ほのかな寂しさ。
夕暮れ、もう日が沈んだあとの空を仰ぎながらお店までの道のりを歩いていると、星がとてもきれいに見える日であることに気づいた。
澄んだ空気のしんとした静けさのなかにシリウスの輝き。
季節はもう冬にかぎりなく近い。
結局今年の金木犀は十三夜の朝にはじめてその香りを観測してから三日も経たずに消息を絶った。
またふたたび戻ってくるだろうと思っていたのに、行方不明のまま秋も終わる。