2025/03/31
holy gardenのピクニック
holy gardenのお庭でピクニック。
ミモザのお花のリストレットを互いに結びあい、矢車菊が飾られたトライフルをいただいて、ストロベリーのお茶に星のような花の黄色を浮かべる。
つがいの鳥が幾度も頭上を渡ってゆくたび、光のなかを通りすぎてゆく影、植物たちの揺らぎ。
柔らかで甘やかな午後。
holy gardenにむかうまえ、駅で待ちあわせしていた友人と目的地にむかって歩きながら本の話をして、今井むつみ著『ことばの発達の謎を解く』の話題になり、自分が子どものころに“シンデレラ”という発音がむつかしかった時期があったことを想いだした。
それを想いだしたからなのか、精霊たちが宿っているだろう樹木にかこまれた森の、鳩のご夫婦の安心した軽やかな羽ばたきが聴こえる庭で、シンデレラのことを考えたりしていた。
わたしが幼いころに読んだ童話はかなり原典に添ったもので、魔法使いのおばあさんは登場せず、彼女に舞踏会へのみちしるべをあたえてくれるのは、彼女を子どものころから見守っていた樹の精と鳩の夫婦だった。
そしてかれらがシンデレラにあたえたドレスと靴は、彼女の亡き母親のものだったように覚えている。架空の記憶かもしれないけれども。
靴は硝子ではなく金の靴で、金色というのは「この世であらわすことができない高次の色を、視覚化するためにあえてあらわされた色」なのだと、最近人から聞いた話も数珠つなぎに想起されて、だからその“金の靴”はシンデレラの次元を変えてくれる、時空を超えた母親からの贈り物だったのかもしれない、などと思ったりした。
そういえばシンデレラをモチーフにしたゲイル・カーソン・レヴィンの『さよなら「いい子」の魔法』が『魔法にかけられたエラ』と改題して復刊されたときも、ある女の子たちへの贈り物としてholy gardenを形成するみっつのお店のひとつ、草舟あんとす号さんにお頼みして出版社から取り寄せていただいたことがあったなと、そのことも懐かしく感じながら。
あの本もわたしにとって、とても大切な物語。
大切な場所は、大切な記憶を連れてくる。
コトリ花店さんの白いお部屋からいただいてきたお花たちが、陽射しを浴びてきらめいていた。
鱗粉をこぼす妖精みたいに。
うつくしいヒヤシンス。甘く清められるような香り。
草舟あんとす号さんの窓辺と、conafeさんの棚に気づかなければ通りすぎてしまいそうなほど密やかに置かれてあったきれいなもの。
あとから振り返ればholy gardenのみっつのお店で、それぞれのチューリップの花が沈黙で囁いてくれるような日でもあった。