水鏡に映る森が、逆転した世界で邂逅したさかさまの双児のように繋ぎあわされた写真を目にしたときから、とても心惹かれて、その一枚のフォトグラフを頼りに訪ねていった。
海でも湖でも川でもなく、沼。
そこに眠っているものは底がなく、どこまでも深きに潜るみずからの深淵かもしれない。
「その扉にいたる手がかりをどうぞ」というふうに置かれていた鍵。
散りばめられた鮮やかな赤が、差しだされた鍵とともに、ひとつの暗号みたいだった。
合言葉のように“Alice”とクレジットに明記された、8mmフィルムの映像に登場する女の子たちの名は、“どこでもない国”の“どこでもない場所”にあなたを誘うので、潜ってみてください、といっているみたいで、ノスタルジアというにはまだ身に覚えのある感情を撫でていく、原風景に触れる展示だった。