2024/01/27

月桂樹





 赤坂離宮の「朝日の間」の天井画に描かれている女神アウロラは、左手に月桂樹を持っている。


 月桂樹は太陽神アポロンの象徴ではあるけれど、ここではアポロンというよりも「太陽神」の象徴として描かれているのだと思う。


 アポロンはヘリオスという神と同一視されることがあり、そのヘリオスは太陽神でもあって、そしてアウロラの兄でもある。そして月の女神であるセレネは彼女の姉妹。


 曙、暁の女神であるアウロラは、兄弟神の両極の性質をあわせもっている女神であるといえ、兄と姉(太陽と月)が統合された末妹でもある。


 女神アウロラのことを“知った”とき、アウロラの名にある「ラー」は太陽神のことを意味しているというメッセージを受けとったことがある。


 彼女が「太陽の娘」であるあかしが名にあらわされているということで(わたしはそれを受けとったとき、クレオパトラみたいだな、と思った。クレオパトラの名も父=太陽を愛するという意味がひとつにあったはずだと記憶から呼び起こされて)、しかしそれをそのまま受けとるにはわたしの意識に抵抗が生じた。


 「ラー」が太陽の神であるのはエジプトにおける話で、アウロラはギリシア、あるいはローマの女神なのだから、と、後世に生きるわたしは知っている。だからそのメッセージの整合性がとれないではないか、と意識が抵抗してきたのだ。


 そういったわたしに対して、そのようなことにあまり意味はない、と返ってくる。



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 アウロラがギリシア、ローマの女神であるというのはのちの歴史に過ぎなくて、彼女はそれ以前から存在している。


 疾走する馬に率いられる者の壁画や肖像は古代から世界の各地にあり、それはすべてアウロラにまつわるものだと考えていい。


 彼女の兄であるヘリオスも馬とともに行進する姿で描かれていることがあるが、あれもアウロラの一面であるに過ぎない。


 それほどに彼女、アウロラは重要な女神であり、そしてだからこそ秘され、あまり注目も受けないようにされてきた。それは安全に護られるという意味でもそうされてきた。しかしすでに秘されていたものが開かれる時代、封印は解かれる時代に入る。


 アウロラはその時代を待って“復活する”女神の一柱でもあった。



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 そのようなメッセージを受けとったのも、もうずいぶんまえのこと。当時からすれば、わたしの“意識”もずいぶん柔軟になった(と、思いたい)


 月桂樹は太陽神の象徴。それはアポロンであり、ヘリオスであり、ラーであるもの。


 赤坂離宮の天井画を描いたのはフランス人画家だったというけれど、なにを思って女神の左手に月桂樹を持たせ、そして4頭の白馬をあらわしたのだろう、ということに興味がある。  





 「太陽の戦車を御するヘーリオス」という絵のなかでもヘリオスは白い馬を率いている。そしてそれは“太陽の戦車”なのです。


 アウロラが夜から朝に暁を翔けるときもその“戦車”にのっている。


 どうやらそれは“太陽”をつかさどる者だけがのれる特別なもので、それを御するにはタロットカードのチャリオットのように、おのれのなかの黒と白(夜と朝、冬と春、陰と陽)が統合されている必要があるのかもしれない、とも。  


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 (ちなみに月桂樹はわたしの誕生花でもあるのです。そういったこともふくめて深い縁を感じる女神のおひとりでもありますね。)