先日、“妃子笑”という岩茶をいただく機会があった。
妃を喜ばせるためのお茶、そのお茶をふくんだ妃が思わずうっとりと微笑んだ、というのが名の由来らしく、その妃とは楊貴妃であるとのことで、薔薇の花びら、あるいは桃の果実のごとき色あいの可憐な茶器にそそがれた、黄金に輝くそれを自分のなかに馴染ませ、流してゆくのはとくべつな体験だった。
茶の香を利き、指の先にまで神経をゆきとどかせて天に捧げるみたいに両手で茶器を持つ時間はご神事のようでもあった。――そのように“自分とつながるための時間”として設けた空白はどれもみな神事であるのだろうけれども。
金色に光りながら芳醇なフルーツのような味わいで、たしかにこれは高貴なかたのためのものだったのだろうと感じさせられるものがあった。
いにしえの三女神の系譜をたどるみたいに、それぞれの茶器に浮かべた黄金で三角形を描いて(そして市杵島姫、赤城姫、ノルン、など三姉妹の女神たちのことが話題にのぼる。)
フィルムには残さなかったので、文字の記録として。